火を放つ。

じゃっ!
まったねー!



元気に両親が帰っていきました。



帰る先は実家ではなく
相変わらずの

借り上げ住宅。




毎回、年越しは
私が福島県の実家に帰り
両親や親戚、地元の仲間たちと
飲んだくれた果てに
ハッピーニューヤー!
とか

叫んでいましたが





震災後は
両親が年越しを
東京の私のところに来てくれるように
なりました。


東京は人が多くて疲れるから嫌だ
と言っていた両親が

わりとフットワーク軽く
来てくれるようになり
嬉しい思いもあるんだけれど


やっぱりさみしい。



私は何年
実家に入っていないんだろう。



実家の茶の間で


両親とお茶を飲みたい。

お正月は、ばあちゃんちに言って
ばあちゃんの車椅子の
ギコギコいう音を聞きながら

けいごちゃん、きたのがー?
て、

言われたい。





津波からは免れ
残った実家の家も

ずいぶんいたんできた、と
聞きました。


家って


人が住んでいないと
そんなにもいたむものなのか、、



なおして住むには
何百万か、かかるとか。


何百万もかけて
なおして

自分らの歳を考えて
あと何年住めるのか




それを考えると
明確な予定はまだ立てられないと
言っていました。





震災後

自分にできることは何か?
何をもってすれば

南相馬市
福島県
東北

笑顔が増えるのか


ずっと考えたり
行動したり


色々、、、

私なりの
ほんの小さなことですが



がんばってきたつもりです。



それは、



私が良いひと、とか、
優しいひと、とか
だからではなく


ただ、そうしたかったから




仲間や

知らないけど
同郷の方たちの
笑顔が見たかったから。


大好きな土地の
大好きな景色と場面を


もう一度
見たかったから




自分が


私が笑顔でいたかったから
茶の間で箱根駅伝見たかったから。



神様は
私にどうしろ、と言ってるんだろうか




もう


ここまで時間がたつと


心が折れて



もう、どうでもいいよ、、



考えないでいたい



何にも考えずに
ぐっすり眠って


起きたら
全部夢だった


そんな映画があってもいい。





漠然と

そんな虚しさを感じていたとき




父から

ある話を聞きました。





宮城県の方の話だそうですが




海から程近い
少しだけ高台にある自分の家の庭で
何か作業をしていたそうです。



そして
その作業中、ふと海を見ると


津波らしきものが迫ってくるのが見えた。



見下ろせる漁港には
親戚や仲間が
ウロウロいて

網の手入れをしている姿が見えた



その方は
大声で
全身の力を振り絞り


おーい!!
逃げろー!
津波だ!!

津波がくるー!


と、叫んだけど、、、



何十メートルも先には
届くはずもなく

聞こえるわけもなく





なあ?
けーこ、

そごで、そのひと、
どうしたと思う?


父の問いかけに
私は答えられませんでした。


叫び続けたの?
絶望して泣いて
身体壊したの?

そんな
ありきたりの答えを並べながら


その方の
目の前で命が流れる場面を見たであろう
絶望が
激しい自責の念が


想像できて


次の言葉を聞くのに
意味不明な緊張が走りました。



けーこ!
すっげーどな!
火、放ったんだど!


えーっ?!!!


思わず
目の前の父の顔を
マジマジと見て

次の言葉が
見つかりませんでした。





高台に住む
その方は


自分の声が届かない、と
判断した
その瞬間に



自分の家に



火を放ったそうです。





うあーっ!!
じっちゃんち、燃えでっとー!!

じっちゃん、1人で家にいるはずだ!
死んじまー!

助けにいがねっかー!!!





そう叫んで

燃え上がる火の手に
一目散に
漁港からじっちゃんを助けに
駆け上がってきたひとたちが



全員、助かった。






聞きながら


心が震えるのを感じました。





どうしてだか
今でも自分でもわからないんだけれど



日本人て

本来そういう人たちなんだよな、、、




そんな気持ちが
湧き起こりました。



しばしの沈黙の後

すっげーじーさんだな、、
と私が言うと



んだがらよなあ!
と言って


目の前にいる父は
笑顔でした。





父も母も大変な思いをして
親戚も、知人も、
仲間たちも大変な状況で


でも

それでも私に

笑顔をくれる





どうでもいい、、
とか言ってたら
恥ずかしいよな、、。




無理はしないで


でも
やれるだけ


せめて


自分を恥ずかしくしたくないから



まだまだ

がんばっていこうと


思います。

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keiko